本記事ではコンデンサのデータシートに記載されている用語についての解説と・各種パラメータを利用した設計計算方法について解説しております。
絶対最大定格
部品を使用するうえで絶対に超えてはいけない値になります。設計時にはこの値を超えないように設計しましょう。
定格電圧
コンデンサに連続的に印加できる最大電圧です。
直流で使用することを想定したコンデンサであれば○○VDCと記載があり、
交流で使用することを想定したコンデンサであれば○○VACと記載があります。
交流に関してはAC電圧の実効値がこの値を超えないようにしましょう。
耐電圧
定格電圧とは違い、定格条件で動作する際に、短時間印加しても絶縁破壊・異常電流が生じない最大電圧になります。
「安全マージンを確認するための参考指標」として使用します。
そのため、設計では定格電圧を基準にし、耐電圧は安全率の裏付けとして確認する使い方をします。
この値は一瞬でも超えてはならない値になります。
印加電圧+リップル+サージの電圧値がこの値を超えないようにしましょう。
耐電圧(端子–端子間)
こちらは全コンデンサ共通の項目となります。
端子-端子間耐電圧は印加される最大サージ電圧にどれくらい耐えれるかの数値になります。
サージ保護デバイスを使用しない場合は発生しうるサージ電圧より高い耐電圧を保有していること。
バリスタなどのサージ保護デバイスを使用している場合は、
保護デバイスによるクランプ電圧×安全率(約1.5)≦耐電圧(端子-端子間)となっていること。
耐電圧(端子–ケース間)の確認
こちらは導電性のケースのコンデンサの場合の外装絶縁強度になります。
端子-ケース間の耐電圧値はケースと端子間で、湿気・ほこり・沿面アークが発生しないようにする意味合いや、
感電・トラッキング・火災を防ぐための絶縁の安全基準であり、
ケース樹脂や絶縁材がどの程度の電圧に耐えられるかを示しています。
この値が回路の印加電圧+リップル電圧の合計で超えていないか、また、別途耐電圧試験などのサージ試験にて問題ないかを確認すること
使用温度範囲
コンデンサを連続使用できる温度範囲になります。この温度を周囲温度だけでなく、コンデンサ自身の自己発熱も考慮して、許容範囲を超えないように設計しましょう。
恒温槽で周囲温度Ta(min/typ/max)+通電でコンデンサケース温度を熱電対で実測し、
使用温度 + マージン(10〜15℃)がコンデンサの定格上限温度を超えないか確認しましょう。
例)実測結果が最大60℃なので 安全マージン含めて75℃ → 定格85℃品ではギリギリ、100℃品が推奨
電気的特性
静電容量C
どのくらい電荷を蓄えられるかという能力を表す量。単位はファラド(F)。
設計時はこの値にさらに『静電容量許容差』、『印加電圧バラつき』、『温度バラつき』、『経年変化』を加算した誤差がコンデンサの実使用上の静電容量値になります。
静電容量許容差
静電容量許容差は、コンデンサの製造バラつきによる初期値のばらつき範囲を規定したものです。
これは『DCバイアス特性による印加電圧バラつき』と『温度特性による温度バラつき』と『経年変化によるバラつき』とは別のものになりますので設計時はこの『静電容量許容差』、『印加電圧バラつき』、『温度バラつき』、『経年変化』を加算した誤差がコンデンサの総合的な誤差となります。下記のように許容差の精度ごとに記号分けされていたりします。

使用する回路によっては精度の高いコンデンサを選ぶようにしましょう。
温度特性
温度特性は周囲温度変化による静電容量Cの変化率を表したものです。
下記のような温度特性グラフを用いて実使用温度下での静電容量変化率を求めましょう。
例)周囲温度-20~+80で使用する場合、下記グラフ上の青線が対象コンデンサのグラフの場合、-3%~+10%の静電容量変化率となる。

DCバイアス特性
チタン酸バリウム系などの「高誘電率誘電体を用いたセラミックコンデンサ(Class II, III MLCC)」特有の特性になります。印加する直流電圧による静電容量Cの変化率を表したものです。サイズの小さいものほど変化が大きくなります。
純粋なDC電圧が印加される場合はそのまま印加されるDC電圧時の静電容量変化率を確認しましょう。
DC+AC重畳電圧の場合はDC成分のみで変化率を確認後、AC振幅に応じて2〜5 %程度の補正を見込みましょう。
例)直流電圧3V印加時、下記グラフより、コンデンサの静電容量変化率はー20%となる。


AC電圧特性
チタン酸バリウム系などの「高誘電率誘電体を用いたセラミックコンデンサ(Class II, III MLCC)」に顕著に表れる特性になりますので他コンデンサには記載がない場合が多いです。印加する交流電圧による静電容量Cの変化率を表したものです。
例)AC2.0V(実効値)の電圧印加時、コンデンサの静電容量変化率は下記グラフより、10%となる。


AC周波数特性
チタン酸バリウム系などの「高誘電率誘電体を用いたセラミックコンデンサ(Class II, III MLCC)」や『低誘電率誘電体を用いたセラミックコンデンサ』に顕著に表れる特性になりますので他コンデンサには記載がない場合が多いです。印加する交流電圧の周波数による静電容量Cの変化率を表したものです。
例)B特性のコンデンサの場合、周波数500kHz時の静電容量変化率は5%となる。

経年変化(エージング)特性
チタン酸バリウム系などの「高誘電率誘電体を用いたセラミックコンデンサ(Class II, III MLCC)」に顕著に表れる特性になりますので他コンデンサには記載がない場合が多いです。
製造後または再焼成後に時間の経過に伴い、静電容量Cの変化率について表したものです。
例)下記グラフより、製造後1000h経過後のコンデンサの静電容量変化率は-12%

誘電正接tanδ
誘電正接(tanδ)は、コンデンサの誘電体がエネルギーを電気損失として熱に変換する割合を示すパラメータです。
これは理想的なコンデンサの位相90°からずれた分の抵抗成分の割合になります。
tanδ = ESR × 2πfC
→ ESR = 誘電損失を等価直列抵抗に換算したもの。つまり、ESR ≒ tanδ / (2πfC) として扱われます。
このパラメータは以下の用途の使い方で設計する際に利用します。以下に設計での使用方法を記載します。
用途①:自己発熱/損失電力計算(AC印加時(容量ドロッパ、X/Yコン、フィルタ用等))
AC印加時(容量ドロッパ、X/Yコン、フィルタ用等)は損失電力や自己発熱量を計算するために使用します。
自己発熱量は誘電損失による消費電力PdとESRによる熱損失の合計になります。
それぞれ下記の式で近似して求めることが出来ます。
誘電損失\(\ P_D = \ V_{rms}^2・πfC ・tanδ \)
- \(\ V_{rms}\): 印加 RMS 電圧(V)
- f:周波数(Hz)
- C:静電容量(F)
- tanδ:誘電正接
ESR損失\(\ P_R = \ I_{rms}^2・Rs \)
- \(\ I_{rms}\):リップル電流(求め方は実測やシミュレーションにて)
- Rs:等価直列抵抗ESR
Xコンデンサの発熱合計\(\ P_{total}=\ P_D+\ P_R\)
次に部品の熱係数Gを調べてXコンデンサの熱損失による温度上昇率を求める。
(熱係数Gはデータシートやメーカ提出資料に記載あり、G=10mW/℃などで記載)
発熱量ΔT=\(\frac{\ P_{total}}{G}\)
- G:熱係数(X2 フィルムコンデンサ例として、G ≈ 10〜20 mW/℃が一般的、密閉時20~30mW/℃)
- \(\ P_{total}\):Xコンデンサの総熱損失
上記で求めた温度上昇率を周囲温度に合計することで部品温度を求め、この温度が定格温度より十分下であればOK
周囲環境が50℃の場合、温度上昇率が20℃であれば70℃が部品温度。この温度と定格温度を比較する。
絶縁抵抗IR
絶縁抵抗IRは直流電圧を印加したときに流れる漏洩電流\(\ I_{leak}\)に対する抵抗値です。
○○MΩ・μFで表され、1μF当たりの抵抗値を示しています。
この値と定格電圧値・静電容量から、コンデンサにどれくらいの漏洩電流が流れるかを算出できます。
参考文献:村田製作所セラミックコンデンサの絶縁抵抗と漏れ電流
C=0.47μF、定格電圧=250V、IR=15000MΩ・μFでの漏洩電流値を算出してみます。
\(\ IR_{min}=\frac{15000}{0.47}≈31.9MΩ\)
漏洩電流最大値\(\ I_{leak}=\frac{250}{31.9×\ 10^6}\)≈7.8μA
→漏洩電流の規格値
温度上昇・加熱・高湿度環境では IRは1桁以上悪化することもあり得るため、対策として10~100倍のIRを目安に設計するようにしましょう。
等価直列抵抗ESR/等価直列インダクタンスESL
実際のコンデンサは抵抗成分(R)やインダクタンス成分(L)を含んだ等価直列抵抗で表せられます。この時の抵抗成分(R)のことを等価直列抵抗(ESR)、インダクタンス成分(L)のことを等価直列インダクタンス(ESL)といいます。

インピーダンス特性
交流電圧を印加した際に周波数によって電流の流れにくさであるインピーダンス(抵抗器でいうところの抵抗値)の値が変化する様子をグラフ化したもの。実際のコンデンサには抵抗成分やこ交流電圧を印加した際に周波数によって電流の流れにくさであるインピーダンス(抵抗器でいうところの抵抗値)の値が変化する様子をグラフ化したもの。
使用する周波数帯で使用したいインピーダンス値になるようなコンデンサを選定しましょう。
例)下記のグラフにて周波数20MHz付近で最小インピーダンスとなるコンデンサを使用したい場合、0.1μFのコンデンサが適している。

参考資料

まとめ
本記事ではコンデンサのデータシートに記載されている用語についての解説と・各種パラメータを利用した設計計算方法について解説させていただきました。上記のパラメータはコンデンサの設計時に確認すべきパラメータになりますので、ぜひ設計にお役立てください

