本記事ではダイオードのデータシートに記載されている用語についての解説と各種パラメータを利用した設計計算方法について解説しております。
絶対最大定格
部品を使用するうえで絶対に超えてはいけない値になります。設計時にはこの値を超えないように設計しましょう。
繰り返しピーク逆電圧(最大動作ピーク逆電圧、最大ピーク反復逆電圧、せん頭逆電圧、せん頭逆方向電圧):VRRM
繰り返し印加できる逆電圧の最大値。この値を超えると逆電流が急激に流れてしまいます。
繰り返しせん頭サージ逆電圧VRRSM と繰り返し先頭サージ逆電力PRRSM(VRP×IRP)を満たしていれば
この値を超えていても使用可能。
非繰り返しピーク逆電圧VRSM
コイルの逆起電力などで1発だけ大きな電圧がかかる際に耐えれる逆電圧値です。
起こりうるサージ電圧値を求めてこの値を超えないことを確認しましょう。
例)AC100V用のブリッジ整流ダイオードの場合、雷サージやノイズで200~300Vのサージ電圧がかかると想定し、VRSM=450V以上のダイオードを使用する。
繰り返し尖頭サージ逆電圧VRRSM
毎回ではないが何度も繰り返し発生する瞬間的サージ逆電圧に対する耐久値になります。
起こりうるサージ電圧値を求めてこの値を超えないことを確認しましょう。
代表例として以下のような場合で考慮される値です。
- インダクタ負荷の PWM ドライブ(スイッチングのたびに逆電圧スパイクが発生)
- SMPS の整流ダイオードにおける
- トランスリーケージインダクタンスによるスパイク
- モータやソレノイドのフリーホイール時
- ブリッジ整流で、ラインノイズや微小サージが頻繁にのる場合
例)フライバック2次側整流ダイオードにてスイッチング周波数100kHz、毎周期のスパイク電圧75Vの場合、ダイオードのVRRSM=90Vであれば余裕があるため、OK
平均順電流:IF(AV)
ダイオードに順方向でダイオードに順方向で電圧を印加した際に流してもよい電流の最大値
非繰り返しピーク順電流:IFSM
規定の温度下で、50Hzの正弦半波、もしくは10msの矩形波を1サイクル順方向に印加したときにダイオードが破壊されない最大許容電流値。
電流二乗積I2t
非繰り返しピーク順電流IFSMは50Hzの正弦半波、もしくは10msの矩形波を1サイクル順方向に印加したときの規格ですが、
1ms≦tp<10ms でのパルス幅での非繰返し許容順電流値を計算する場合には、電流二乗時間積 I2tを超えていないかで判断するようにしましょう。以下にサージ波形ごとの電流値の計算式を記載いたします。
- 矩形波の場合:\(\ I^2t=\ I^2×t \)
- 三角波の場合:\(\ I^2t=\frac{1}{3}\ I^2\_{peak}×t \)
- 半波正弦波の場合:\(\ I^2t=\frac{1}{2}\ I^2\_{peak}×t \)
ジャンクション温度:Tj (チャネル温度Tch)
半導体のpn接合部(ジャンクション)の最大許容温度。電流を流すことでpn接合部が発熱するのでこの発熱量がジャンクション温度以内かどうかを後述する熱抵抗などのパラメータを用いて計算する。
詳しい計算方法は以下の記事を参考にしてください

保存温度:Tstg
素子が動作していない状態で保存できる温度範囲になります。
Tℓ(max)-IF特性
順方向電流を流した際に許容できるリード温度Tℓの限度値になります。
Ta(max)-IF特性よりもこちらの方が正確な値となります。
例)平均順電流IF(AV)=1.2Aの場合、最大許容リード温度Tℓ(max)=130℃となる。

Ta(max)-IF特性
順方向電流を流した際に許容できる周囲温度の限度値になります。
例)平均順電流IF(AV)=1.0Aの場合、最大許容周囲温度Ta(max)=90℃となる。

PF-IF特性
実際の動作で順方向電流の量に対する損失の量をグラフ化したものです。
基本的にダイオードの損失量PFを確認する際には順方向電圧VFに順方向電流IFをかけて損失量PFを求めることが正確ですが、下記のPF-IF特性がある場合は、下記理由により、PF-IF特性の方が実測に近いのでこちらを使用しましょう。
- ダイオードの波形(矩形/正弦)を考慮済み
- 高周波時の追加損失(逆回復、リークの温度依存)を含む場合
- ショットキーでの IR(逆電流)による熱暴走対策として複合的に計算している
例)Imax=2Aの正弦半波の平均順電流IF(AV)は1/π×Imax=1/3.14×2A=0.637Aのため、
下記グラフより、平均順損失PF(AV)は約0.63Wとなる。

IFRM-サイクル数特性

電気的特性
順方向電圧VF
ダイオードに順方向に電流を流すために必要な電圧値、
また、ダイオードに順方向で電圧を印加した際にダイオードにて発生する電圧降下の値になります。
逆電流IR
ダイオードに逆方向の電圧を印加した際に完全に電流を遮断するわけではなく、微小な電流が逆方向に流れていきます。この電流のことを逆電流IRと呼びます。
VR-IR特性
この特性は基本的にはショットキーバリアダイオードのみ記載されている特性となります。
(ショットキーバリアダイオードは逆電流が大きいため、他のダイオードは微小なため無視できるため)
逆方向に印加される電圧VRに対して、逆電流IRがどれほど流れるかについてをグラフ化したものとなります。
例)ジャンクション温度Tj=25℃、逆方向電圧VR=20Vの場合、逆方向電流IR=0.1μAとなる。

逆回復時間trr
ダイオードに印加する電圧を順方向→逆方向に切り替えた際に瞬間的に逆方向に順方向電流IFより大きい逆回復電流が流れた後、逆回復電流ピーク値から、通常の逆電流値に収束するまでの時間を示したものである。
接合容量Ct
ダイオードに逆方向電圧を印加した際は電荷がダイオードに貯まるコンデンサのような振る舞いをする。
この時の静電容量を接合容量Ctと呼びます。
ツエナー逆電圧VZ/IZ
ツエナーダイオード特有の特性です。ツエナーダイオードに逆降伏電圧が発生する電圧値/電流値です。
静電気耐量ESD
どれくらいの静電気パルスに壊れずに堪えることが出来るのかについての目安になります。
実際の設計では、使用する製品でどのESD試験レベルが要求されているかによって、その試験レベル以上のダイオードを選定しましょう。また、その際のクランプ電圧がICの許容電圧を超えていないかも確認すること。
例)IEC 61000-4-2 レベル4(接触放電:±8kV、気中放電:±15kV)要求時にはそれ以上のESDを持つダイオードを選ぶこと。
IF-VF特性
順方向電圧VFはダイオードに流す順方向電流IFとジャンクション温度Tjによって決まります。
ですが、ジャンクション温度Tjを求めるためには順方向電圧VFと順方向電流IFによる損失を求める必要があるので
矛盾しています。
そこで実際の設計では、ジャンクション温度Tjを仮定してVFを確認し、そのVFを用いてジャンクション温度を計算。計算したジャンクション温度にて再度グラフにて順方向電圧VFを確認し、この計算を繰り返すことで順方向電圧VFが正しい値に近づいていきます。以下にステップごとの順方向電圧VFを求める手順記載いたします。

ステップ1:Tj=25℃のVFを仮定値としてダイオードの損失を計算する
まずは上記データシートよりTj=25℃の時のVFを確認し、ダイオードの損失量を計算しましょう。
例)順方向電流IF=0.2Aとした時のTj=25℃の時の順方向電圧VFは上記グラフよりVF=1V
よってダイオードの損失量P=IF×VF=0.2×1=0.2W
ステップ2:ジャンクション温度Tjを計算する
上記ステップ1で求めたダイオードの損失量Pを用いてジャンクション温度Tjを計算しましょう。
例)周囲温度Ta=40℃、ダイオードのジャンクション-空気間熱抵抗Rth(j-a)=60℃/Wの時、損失量P=0.2Wのため、
ジャンクション温度Tj=Ta+(Rth(j-a)×P)=40+(60×0.2)=52℃
よって上記ステップ1にて仮定したTj=25℃の時と比べ差異があるのでTj=52℃の時のVFを再度確認する
ステップ3:温度変化によるVF変化率を求め、仮定したVFに反映させる
上記グラフを確認し、温度変化によるVF変化率を確認しましょう。
例)順方向電流IF=0.2Aの時で、Tj=25℃の時のVF=1V、Tj=75℃の時のVF=0.92Vのため、
温度変化率α=(0.92-1)/(75-25)=-0.0016V
よって、仮定のジャンクション温度と計算したジャンクション温度の差による順方向電流VFの変化量は
ΔVF=-0.016×(52-25)=-0.0432
仮定したTj=25℃の時の順方向電圧VFに上記のΔVFを加味すると
VF=1-0.0432=0.9568V
ステップ4:TjとVFが一致するまでステップ1~3を繰り返す
上記ステップ1~3を繰り返すことにより、TjとVFが一致してくるようになる。
まとめ
本記事ではダイオードのデータシートに記載されている用語についての解説と・各種パラメータを利用した設計計算方法について解説させていただきました。上記のパラメータは抵抗の設計時に確認すべきパラメータになりますので、ぜひ設計にお役立てください。
