目次
1. 「カナダ 特定有害物質禁止規則2012(PCTSR)」とは?
正式名称:
Prohibition of Certain Toxic Substances Regulations, 2012
発効日:
2012年3月
制定主体:
カナダ政府 環境・気候変動省(Environment and Climate Change Canada, ECCC)
目的:
**環境保護法(CEPA: Canadian Environmental Protection Act, 1999)**の下で、
特定の有害化学物質の製造・使用・販売・輸入を全面禁止または厳格制限し、
人の健康と環境への悪影響を防ぐ。
ポイント:
- 物質リスト(スケジュール1および1.1)に基づき規制
- 原則禁止。ただし、一部限定用途では条件付き許可
- 規制対象は物質そのもの、混合物、製品、機器に及ぶ
2. 規制対象物質(スケジュール1・スケジュール1.1)
この規則で規制される代表的な物質例:
物質名 | 特徴・用途例 |
---|---|
アルデカルブ(Aldicarb) | 農薬(非常に高毒性) |
アスベスト(Asbestos) | 建材・絶縁材(発がん性) |
ポリ塩化ビフェニル(PCBs) | 絶縁油、旧型機器 |
ペンタクロロベンゼン(PeCB) | 防腐剤用途 |
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS) | 撥水・撥油剤 |
水銀および水銀化合物(Hg) | 電池、測定機器 |
クロロフルオロカーボン類(CFCs) | 冷媒(オゾン層破壊) |
スケジュール1.1では、より限定された特定の用途禁止(例:特定製品への使用)が細かく指定されています。
重要:
リストは必要に応じて改訂され、新物質(例:PFAS類など)が追加されることがあります。
常に最新版を確認する必要があります。
3. 適用範囲と禁止内容
PCTSR 2012は以下に適用されます:
- 物質そのもの
- 物質を含む混合物(インク、塗料など)
- 物質を含む製品(電子機器、衣料品など)
- 物質を含む機器(冷却機器、測定器など)
基本ルール:
▶ リスト掲載物質を製造、使用、販売、輸入することは禁止
▶ 物質を含む製品または混合物を取り扱う場合も原則禁止
違反した場合、CEPAに基づく厳しい罰則(罰金、刑事責任)あり。
4. 除外規定(Exemptions)
一部の物質・用途では除外または条件付き許可があります:
- 研究開発用途(要登録・申請)
- 分析測定用(標準品)
- 規定濃度未満(例:ppmレベル以下)
- 特定の社会的重要用途(例:医療機器での水銀使用)
免除を受けるには、通常、政府への申請または届け出義務があることに注意。
🍁【PCTSR 主要物質 詳細ガイド】
ここでは、代表的な物質をピックアップして、それぞれ【禁止内容】【除外条件】【注意点】をまとめます。
① 水銀 (Mercury) およびその化合物
🔹 禁止内容
- 水銀または水銀化合物を単体で輸入・販売・製造禁止。
- 水銀を含有する製品(例:体温計、蛍光灯、スイッチ、リレーなど)も禁止対象。
🔹 除外条件(認められるケース)
- 特定の医療機器(例:血圧計、体温計)で代替技術が不適切な場合。
- コンパクト蛍光灯(CFL)については**水銀量制限(例:≤5mg/ランプ)**を条件に一部許可。
- 研究開発用・標準分析用途(要登録)
🔹 注意点
- 水銀使用量が非常に厳格に規定されており、単位製品ごとに最大含有量規制がある。
- 水銀を使用する場合は、**必ず政府への報告義務(Declaration of Use)**がある。
② ポリ塩化ビフェニル (PCBs)
🔹 禁止内容
- PCBs自体の製造、販売、輸入を全面禁止。
- PCBを含む装置・機器(変圧器、コンデンサ等)も規制対象。
🔹 除外条件
- すでに存在する古い機器(レガシー機器)については、段階的廃止(フェーズアウト)スケジュールに従い管理。
- 廃棄処理期限が設定されている(例:特定施設では2025年末までに廃棄必須)。
🔹 注意点
- PCB含有が疑われる場合は、**必ず分析証明(検査)**が求められる。
- 保管、取り扱いにも**特別なライセンス(Storage License)**が必要。
③ PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
🔹 禁止内容
- PFOSとその塩、PFOSを含有する製品・部材(撥水材、防汚材など)の製造・販売・輸入を禁止。
🔹 除外条件
- 半導体製造用のフォトレジスト材料など、特定の高信頼用途では使用可(ただし用途別制限あり)。
- 航空宇宙産業、防衛産業用の特定用途で限定認可。
🔹 注意点
- PFOS含有率規定あり:部材中0.001%(10ppm)未満なら規制対象外。
- PFOS関連物質(例:PFHxS、PFOA)も今後追加規制対象になる可能性があるので要注意。
④ アスベスト (Asbestos)
🔹 禁止内容
- すべてのアスベストおよびアスベスト含有製品の製造・輸入・販売を原則禁止。
🔹 除外条件
- 例外的に、歴史的建築物の補修工事などに限定許可される場合あり。
- 特定の軍事用途では、厳格なリスク管理下での限定使用可。
🔹 注意点
- 規制対象はクリソタイル(白石綿)も含むすべてのアスベスト繊維種。
- 廃棄物処理時も特別規制あり(専用管理施設での処理義務)。
⑤ アルデカルブ (Aldicarb)
🔹 禁止内容
- アルデカルブ(強毒性農薬)の製造・販売・輸入を全面禁止。
🔹 除外条件
- 無し(基本的に例外は認められない)。
🔹 注意点
- ごく微量でも製品に残留している場合、即違反認定となる。
- 輸入農産物の検査においても厳格な残留基準が適用される。