リレーのデータシート用語解説とパラメータ計算について

エンジニアA君

リレーのデータシートに記載されている用語の意味が分からないです…

ろじペン

リレーに関する仕様はたくさんあるから1つずつ解説するね!
実際に設計に用いる場合のパラメータの使い方についても説明するよ!

リレーの特性は大きくコイル側の特性と接点側の特性に分かれていますので、それぞれについて解説していきます。

目次

保護構造

リレー内部を外部環境からどの程度保護するかによって構造に種類があります。
密閉度が上がるほど用途・製造工程にも制約が出ます。以下でそれぞれについて詳しく説明します。

接点特性

接点構成

リレーは、入力側に電気信号を与えることで、出力側の回路を開閉・切替するスイッチングデバイスであり、入力側と出力側が電気的に絶縁されている点が特徴です。
電磁リレー(メカニカルリレー)では、入力部のコイルに電流を流して発生する電磁力により、出力側の接点が機械的に動作して回路を開閉します。
一方、半導体リレー(SSR)では、入力部のLEDの発光をフォトカプラの受光素子が検出し、その信号でトライアックやMOSFETなどの半導体素子を駆動することで、出力側の導通状態を電気的に制御します。

接点構成とは、入力信号の有無に応じて出力側の回路がどのように開閉または切り替わるか、およびその回路数の違いによって分類されるものになります。以下に実際の種類を解説致します。

接点材質

電磁リレー(メカニカルリレー)の接点に使用している材質についてです。
可動ばねと固定ばねに取り付けられて、電気的に接触性能を保つための材質です。
これらは接点寿命に影響してくるため、用途に応じて適切な材質を選定しましょう。
実際の接点寿命は『接点材質 × 接点形状 × 接点圧力 × 開閉電圧 × 開閉電流 × 負荷特性 × アーク × 開閉頻度』で決まるため、データシートのElectrical Life(電気的寿命)を実負荷条件で確認する必要があります。
以下はざっくりとした選定方針です。

用途材質の候補優先する特性
微小信号Au系、AgPd系など接触安定性、耐環境性
一般的な小~中電力AgNi導電性、耐アーク性
大電流AgSnO₂耐溶着性
突入電流が大きいAgSnO₂耐溶着性・耐アーク性
非常に大きな電流AgW等耐アーク性
硫化環境AgPd等も検討耐硫化性

接触抵抗

リレーの接点が閉じている状態でも理想的な0Ωにならず、『接点同士が接触する部分の境界抵抗』や『接点部分に電流が集中することによる集中抵抗』や『端子や接触ばねなどによる導体抵抗』が存在します。
したがってメーカではこれらすべてを合成した値を接触抵抗として扱っています。

測定方法としてはJIS C 5442に基づき、接点に既知の電流を流し、接点両端の電圧降下を測定します。
測定電流:1A、接点両端の電圧降下:50mVの場合は接触抵抗Rc=50mV1A=50mΩ\frac{50mV}{1A}=50mΩといった具合です。

定格接点電流または開閉電流試験電流
0.01 A未満1 mA
0.01~0.1 A未満10 mA
0.1~1 A未満100 mA
1 A以上1 A
JIS C5442の試験電流一覧

回路設計時に接触抵抗を用いるパターンとしては大きく2つになり、リレーによる電圧降下とリレー接点の発熱の確認になります。

計算例①:電圧降下の確認

例として接触抵抗100mΩ以下と記載されたリレーを使用した場合、リレー接点を通じて負荷に1Aの電流が流れているとすると、リレー接点端子間での接触抵抗による電圧降下は下記となる。

計算式
V=R×I100mΩ×1A0.1VV=R×I=100mΩ×1A=0.1V

電源電圧が5Vだとすると、接触抵抗による電圧降下0.1Vを含めて5V-0.1V=4.9Vが負荷へ伝わる。

計算例②:リレー接点の発熱の確認

同じく接触抵抗100mΩ以下と記載されたリレーを使用した場合、リレー接点を通じて負荷に1Aの電流が流れているとすると、リレー接点での消費電力は下記となります。

計算式
P=R×I2=100mΩ×1A20.1WP=R×I^2=100mΩ×1A^2=0.1W

定格負荷(接点容量)

このリレーが想定された負荷を開閉するための基準となる電圧・電流の組み合わせのことです。
例えば250VAC/10Aが定格の場合、200VACかつ5Aですと定格以内でリレーの開閉を行うことが出来ますが、
実際は『電気的耐久性』の値を確認し、使用条件下で何回開閉が保証されているかを確認し、要求する開閉回数以上かを確認することが必要になります。

接点最大許容電力(開閉容量)

接点が開閉できる負荷電力Pの上限です。Panasonicでは、DCの場合はW、ACの場合はVAで表示するとしています。
P=VIで確認できますが、基本は以下のような最大容量グラフを確認し、使用する電圧・電流がそれぞれグラフの容量以内に収まっているかを確認しましょう。(下記赤斜線の部分が許容電力です)
※AC負荷とDC負荷とで許容値が変化するため、対応する開閉容量のグラフを参照すること。

定格通電電流(接点最大許容電流)

接点開閉電流の最大値になります。使用時にはこの値を超えないようにしてください

最大接点通電電流

接点を開閉せず、閉じたままの状態でリレー接点の端子と他の各部の温度上昇限度を超えること無く、
連続して開閉部に通電できる電流です。
連続通電電流は接触抵抗だけでなく、端子・ばね・内部構造を含めた温度上昇によって制限されます。
メーカーが規定する通電電流値を使用します

接点最大許容電圧

接点を安全に開閉できる最大電圧になります。使用時はこの値を超えない範囲で使用しましょう。
電圧が高いほど接点解離時のアークが発生しやすく、接点消耗・溶着・絶縁破壊につながるためになります。
例えば、最大許容電圧250V ACのリレーを使用した場合、ディレーティング80%で150Vが負荷に印加される場合、

計算式
Vload=150VAC<250VAC×0.8V_{load}=150V AC < 250V AC×0.8

ディレーティングを加味した最大許容電圧以内で使用しているためOK

最小適用負荷

接点を安定して開閉できる最低の電圧・電流の値になります。接点表面には酸化膜・硫化膜・有機物による被膜・摩耗による表面状態変化などが発生することがあり、これらにより接触抵抗が変化することにより、
リレーの安定した開閉を保証することが出来ない可能性があるので、この値未満での使用は必ず超えるようにしてください。
例えば、最小適用負荷:100 mA 5 V DCに対し、10mA 5V DCで使用した場合、
接点電流値が足らず、開閉することが出来ない場合があります。

コイル特性

コイル定格電圧

リレーコイルの定格電圧になります。この電圧を超えて使用するとコイルの発熱→故障に繋がります。

データシート状の周囲温度-最大許容電圧の特性グラフを用いて、使用条件下での最大許容電圧を確認してください。この値が使用温度下での定格電圧になります。
※最大許容電圧は%で表されているのでコイル定格電圧にかけて計算してください

例えば、コイル定格電圧DC=12Vの場合、上記グラフにて周囲温度50℃で使用したとき定格電圧は

計算式
Vmax=12V×1.2=14.4VV_{max}=12V×1.2=14.4V

コイル抵抗

DC型リレーのコイルに使用されている導線の特定温度での直流抵抗値です。
基本的にはコイルに流れる電流や消費電力を求める際に使用します。

計算例①:コイル電流の計算

コイル抵抗がわかればそのリレーを任意の電圧で駆動したときにコイルに何mA流れるかがわかります。
例としては、コイル抵抗Rcoil=100Ωの場合、コイルにDC=12Vの電圧を印加したとすると以下の電流がコイルに流れることが分かる。
※コイル抵抗には公差がデータシートに記載されているため、実際の設計では公差を加えたワースト設計をします。

計算式
Icoil=12V100Ω=0.12AI_{coil}=\frac{12V}{100Ω}=0.12A


定格消費電力

コイル定格電圧を印加したときの消費電力の値になります。
このパラメータ自体は設計計算の主パラメータとして使う場面はあまりなく、
『低消費電力タイプ』か 『標準的なコイル』か 『高感度タイプ』なのかなどの指標として用いられます。
「独立した設計パラメータ」というより、あくまでコイルの電気的仕様を表す代表値と認識しておきましょう。

感動電圧(動作電圧)

コイルが無励磁の状態から電圧を印加する事によりリレーが動作状態に遷移する電圧です。実際の設計では『ドライバの電圧降下』、『配線電圧降下』、『コイル温度上昇』、『個体差』を加味した電圧が感動電圧を上回るように設計する必要があります。

例えば、データシート上で感動電圧が70%以下と記載されている場合、コイル定格電圧DC=12Vのリレーでは以下の電圧以上印加すればリレーが動作状態に確実に遷移します。
※特性グラフもありますが、こちらは動作電圧の傾向を把握するための特性データであり、
 仕様値はメーカーが保証している最大値(規格値)になるため、基本的には仕様値を使用しましょう。

計算式
Vop=12V×0.7=8.4VV_{op}=12V×0.7=8.4V

開放電圧(復帰電圧)

感動電圧(動作電圧)とは逆にリレーが動作状態から復帰状態へ戻る電圧を意味します。

例えば、データシート上で開放電圧(復帰電圧)が5~20%と記載されている場合、コイル定格電圧DC=12Vのリレーでは5%の場合がOFFを確実にさせるという点でワーストケースのため、復帰させる際は下記の電圧以下にしましょう。
※特性グラフもありますが、こちらは開放電圧の傾向を把握するための特性データであり、
 仕様値はメーカーが保証している最低値(規格値)になるため、基本的には仕様値を使用しましょう。

計算式
Vrelease=12V×0.05=0.6VV_{release}=12V×0.05=0.6V

時間特性

「リレーが実際に接点を切り替えるまでに必要な時間」を回路のタイミング設計に反映するためのパラメータです。

特に重要なのは、「リレーコイルに動作電圧を印加した瞬間=接点が切り替わる瞬間」ではないという点です。

動作時間

コイルの定格電圧が感動電圧(動作電圧)に到達してから、接点が規定の動作状態になるまでの時間です。
データシートに15msと記載があれば最大15msかかる可能性があると考えます。

計算例①:リレーON後に負荷を動作させる

例えば、リレー接点が閉じた後に負荷を動作させたい場合、『動作時間+接点バウンス(チャタリング)時間』を加味した時間より後に制御ソフトによる負荷のON/OFFの判断をさせるようにしましょう。
※接点バウンス時間を加味した動作時間が記載されているかをデータシートにて確認するようにしてください

復帰時間

コイルの定格電圧が開放電圧(復帰電圧)に到達してから接点が復帰するまでの時間です。
データシートに10msと記載があれば最大10msかかる可能性があると考えます。

計算例①:リレーOFF後に次の処理を開始する

例えば、リレー接点が復帰した後に次の処理をしたい場合、復帰時間より後に次の処理を行うようにWait時間を持たせましょう。

開閉寿命特性

開閉寿命特性はいずれもリレーの寿命を把握する重要な特性になります。
機械的寿命と電気的寿命は「何回ON/OFFできるか」という点では同じですが、寿命を決める原因が異なります。
基本的には機械的寿命を使用するケースは少ないでしょう。
回路設計では装置の想定使用回数と、リレーの保証寿命を比較しましょう。

電気的寿命(電気的耐久性)

接点へ負荷電流が流れる状態で接点を開閉した場合に、正常に動作できる回数です。

接点開閉時に発生する下記の要因により、接点寿命が短くなります。

電気的寿命を短くする要因
  • アーク
  • 接点の消耗
  • 接点溶着
  • 接点抵抗の増加
  • 接点材料の移行

例えば、
『1時間あたり10回ON/OFF』、 『1日8時間使用』、 『年間250日使用 』、『ディレーティング:1.5』
『AC200V 20A(抵抗負荷)での電気的寿命:100,000回』の場合、まず年間の開閉回数を計算します。
※データシートに記載の負荷条件以外の条件で使用する場合はメーカに使用する負荷条件での電気的寿命を確認しましょう。

計算式
Nyear=10×8×250×1.5=30,000/N_{year}=10×8×250×1.5=30,000回/年

上記に対し電気的寿命が30000回のため、寿命としては以下になります。これが想定仕様以内であればOK

計算式
L=100,00030,000=3.3L=\frac{100,000}{30,000}=3.3年

機械的寿命(機械的耐久性)

接点への負荷電流が流れない回路でリレーを開閉させた場合に、正常に動作できる回数になります。
実際の回路で無負荷で使用する例は少ないですが、その場合は電気的寿命同様に寿命を求めます。

例えば、
『1時間あたり10回ON/OFF』、 『1日8時間使用』、 『年間250日使用 』、『ディレーティング:1.5』
『機械的寿命:200,000回』の場合、まず年間の開閉回数を計算します。

計算式
Nyear=10×8×250×1.5=30,000/N_{year}=10×8×250×1.5=30,000回/年

上記に対し電気的寿命が30000回のため、寿命としては以下になります。これが想定仕様以内であればOK

計算式
L=200,00030,000=6.6L=\frac{200,000}{30,000}=6.6年

耐衝撃特性/耐震特性

耐衝撃特性は短時間に発生する振動に対する特性になり、耐震特性は繰り返し発生する振動に対する特性になります。
それぞれに対し、『誤動作衝撃』と『耐久衝撃』がありますが、
製品としてはどちらのパラメータも満足することが基本になります。

誤動作衝撃

衝撃が与えられている最中にリレー接点が誤動作しないかについての特性になります。
通常運転中の衝撃が問題の場合にこちらのパラメータを参照します。
設計では『製品に発生する衝撃 < リレーの誤動作衝撃』になるように設計しましょう。

例えば、製品の実測結果などから180m/s2180m/s^2の衝撃が推測される場合、誤動作衝撃250m/s2250m/s^2だった場合、以下の安全余裕があります。

計算式
=250180=1.388安全率=\frac{250}{180}=1.388

実際は以下の点も踏まえて安全率をみる必要があります。

安全率をみるうえで考慮すべき点
  • 加速度
  • パルス幅
  • 波形
  • 衝撃方向
  • 回数
  • リレーの励磁状態

耐久衝撃性

このレベルの衝撃を受けてもリレーそのものが破損したり、著しい特性変化を起こしたりしないことを確認するための耐久性能になります。輸送・落下・取付け時などの通常動作以外の場面での衝撃で使用するパラメータです。

例えば、製品の実測結果などから500m/s2500m/s^2の衝撃が推測される場合、耐久衝撃800m/s2800m/s^2だった場合、以下の安全余裕があります。

計算式
=800500=1.6安全率=\frac{800}{500}=1.6
安全率をみるうえで考慮すべき点
  • 加速度
  • パルス幅
  • 波形
  • 衝撃方向
  • 回数
  • リレーの励磁状態

絶縁特性

リレーの絶縁性能に関するパラメータになります。

絶縁種別

どの程度の安全性を持つ絶縁かを示すパラメータになります。代表的には

絶縁距離

絶縁される導体間の物理的な距離を示すパラメータになり、『空間距離』と『沿面距離』の2つで表されます。
空間距離は2つの導体間を空気中で最短距離に測った距離です。
沿面距離は2つの導体間を絶縁物の表面に沿って測った最短距離です。

設計では製品規格で決まった絶縁距離に対し、上記が十分満たしているかを確認しましょう。

絶縁抵抗

本来電気的に絶縁されている部分の間に存在する抵抗値です。基本的には漏れ電流の計算に使用します。

例えば、接点側に250V印加されており、絶縁抵抗が1000MΩだったとしたらコイル側に流れる漏れ電流は以下の値になります。製品でのもれ

計算式
Ileak=250V1000MΩ=250nAI_{leak}=\frac{250V}{1000MΩ}=250nA

以下の回路で使用している場合は上記の漏れ電流が信号に影響する可能性があります。

漏れ電流が影響する回路
  • 高インピーダンス入力
  • 微小電流センサ
  • アナログ回路
  • 高精度計測回路
  • 安全回路

耐電圧(接点間)

接点間の絶縁性能を確認するためのパラメータです。長時間の高電圧に対する絶縁性能になります。
例えば、接点間耐電圧:AC 2,000 V 50/60 Hz 1 minであれば、
接点間にAC 2,000 Vを1分間印加しても絶縁破壊しないことを表しています。

設計では、『電源サージ』、『一時的過電圧』、『想定される異常電圧』などを確認し、上記性能で十分かを確認します。

耐電圧(接点-コイル間)

接点-コイル間の絶縁性能を示すパラメータです。長時間の高電圧に対する絶縁性能になります。
例えば、接点間耐電圧:AC 4,500 V 1 minであれば、
接点-コイル間にAC 4,500 Vを1分間印加しても絶縁破壊しないことを表しています。

設計では、『電源サージ』、『一時的過電圧』、『想定される異常電圧』などを確認し、上記性能で十分かを確認します。

耐サージ電圧・耐衝撃電圧(接点-コイル間)

雷や誘導負荷の開閉などによって瞬間的に発生するインパルス電圧(1.2 × 50 μs)に対する耐性になります。
短時間の高電圧に対する絶縁性能になります。

例えば、コイル-接点間:10 kV(1.2 × 50 μs)と記載があった場合、下記のようなサージがこれら未満であればOKです。

想定されるサージ
  • 雷サージ
  • スイッチングサージ
  • 誘導負荷の逆起電力
  • 電源ラインからのサージ

まとめ

エンジニアA君

リレーのパラメータとその使い方について詳しくなりました!

ろじペン

リレーの回路設計では、実際の負荷条件・使用環境・温度・サージ・開閉頻度などを考慮して総合的に評価し、各定格値に十分な余裕を持たせて部品を選定しようね!

参考資料

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